既婚女性の和装において、もっとも格式が高いとされるのが留袖です。
自宅に留袖が眠っており、使用しなくなったので売却したい方や、遺品整理で古い留袖が見つかり処分したい方なども多いのではないでしょうか。
留袖の中には高額で売却できるものも多くあります。この記事では、留袖の買取相場や、高価買取が期待できる留袖の種類などについて解説します。
留袖(とめそで)の買取相場
まずは留袖の種類ごとに、一般的な買取相場を紹介します。
一般的な色留袖
「色留袖」は、留袖の中でも華やかな雰囲気が特徴です。おもに結婚式のようなフォーマルの場で着用します。留袖ですが、未婚の女性でも着用可能なため需要は高いです。
留袖は紋の数で格式が変化し、5個以上の紋がついていれば黒留袖と同格になります。黒留袖より格下の紋には3つ紋や1つ紋があり、こちらは純礼装の扱いです。
一般的な色留袖の買取相場は1万円~2万円ほどです。総京刺繍の色留袖であれば最高7万円~8万円ほどが期待できます。
一部、稀少な伝統工芸品を使用していると数十万円に価格が跳ね上がることもあります。
黒留袖
「黒留袖」は文字通り、黒い生地を使って華やかに仕立てられているのが特徴です。
色留袖と異なり、黒留袖の紋は胸に2つ、左右の袖に1つずつ、背中に1つの合計5つが正式なものであると決まっています。これは「染め抜き日向紋」と呼ばれます。
黒留袖は黒を基調にすることで主役を引き立て、結婚式などの慶事において大切なゲストを迎えるという意味があります。
黒留袖は既婚者のみの装いなので、色留袖に比べると高値はつきにくいです。しかし下限は比較的安定しており、3~5万円程度で取引されます。
こちらも伝統工芸品であればもっと高値がつく可能性があります。
総京刺繍入りの留袖
色留袖の中でも、総京刺繍入りの留袖はやや価格が高くなります。たとえば京繍作家である合田峰太郎の手がけた作品は、3万円~8万円で取引されることが多いです。
刺繍があることによって着物が豪華に見えるため、刺繍入りの着物は人気があります。特に手刺繍だと手間がかかるためそれだけ希少性があり、買取価格も高くなるのが特徴です。
高額査定が期待できる留袖の特徴
留袖の中でも、高額査定がつくものには共通の特徴があります。主な特徴は次の通りです。
有名作家がてがけた留袖
留袖には有名作家の手がけた作品や人間国宝などがあり、これらは高く売却できます。着物にある落款や、証紙により誰が手がけたものか確認できるので見てみましょう。
有名作家の一例を挙げると次の通りです。
- 羽田登喜男
- 森口華弘
- 中村勇二郎
- 和田光正
- 六谷梅軒
この他にも数多くの作家、あるいは有名なメーカーがあります。
正絹でできた留袖
絹100パーセントの「正絹」で作られた留袖は高額査定が期待できます。絹はもともと他の材料より高価で需要も高いので、その分価格が上がるためです。
留袖の材料には他に麻やウールなどもありますが、これらは安価で素材自体の価値はそれほどありません。
有名産地で作られた伝統工芸品
留袖に友禅のような伝統工芸品が使われている場合は高額査定されやすいです。おもな友禅には次の種類があります。
加賀友禅
加賀友禅は石川県金沢市を産地とする友禅です。「加賀五彩」と呼ばれる、藍、臙脂、黄土、草、古代紫の5色によって彩られているのが最大の特徴です。
また、「ぼかし」や「虫食い」といった技法により自然の美が表現されています。落ち着いた風合いが魅力です。
京友禅
京都発祥の京友禅は、刺繍や金箔が用いられ、派手で豪華絢爛な模様が特徴の友禅です。派手ながらも京都らしいはんなりとした上品さを持ち合わせています。
制作は分業制で、それぞれの工程を別の職人が担当してできるのも特徴です。
江戸友禅
京友禅が公家文化を題材にして発展したのに対し、江戸友禅は武家や町人の文化をもとに作られた友禅です。そのため、その雰囲気は落ち着いた、渋さのあるものとなっています。
京友禅と異なり、ほぼすべての工程を1人の作家が担っているのも特徴です。
証紙や落款付きの留袖
証紙や落款付きの留袖は高額になりやすいです。留袖の中でも、品質の良いものや著名な作家が手がけたものにはほぼ必ず証紙と落款がついています。
証紙は産地や素材、染色技法などが記載された紙で、落款は留袖本体に捺される作家の印です。
これらは正規品の証明にもなるため、証紙や落款のある留袖は正規品として高値がつきます。
状態の良いもの
留袖をはじめ、着物は湿気や摩擦に弱く傷みやすいため、状態が良いものはそれだけで高値がつきやすくなります。
保管状態に気を配り、売却する当日まで良好な状態を保ちましょう。
サイズの大きい留袖
売却した留袖は店頭に並べられ、誰かが購入して着るため、汎用性の高いサイズの方が高く売れます。具体的には、150cm以上の丈がある留袖は需要が高いです。
ある程度の丈があれば、身長に合わせて仕立て直せます。しかし、丈が短いものは仕立て直せないので需要が低く、買取価格も安くなります。
保存状態が高額査定につながる!留袖の適切な保管方法
留袖の高額査定に欠かせないのが保存状態です。着物には適切な保管方法があるので覚えておきましょう。
留袖には「夜着だたみ」が最適
留袖は「夜着だたみ」というたたみ方で収納しましょう。着物には「本だたみ」や「袖だたみ」などいくつかのたたみ方があり、着物の種類で使い分けます。
留袖には繊細な模様を傷つけにくい夜着だたみが最適です。夜着だたみは衿、袖、身丈の順に整えたたんでいきます。
湿気を避けて桐たんすなどに保管
着物にとって湿気は大敵なので、通気性の良い桐たんすや湿気の溜まりにくい衣装ケースに収納しましょう。
着物はたたんだ後、1着ずつたとう紙に包んで、着物同士が擦れないようにして保管します。また、保管した後も数ヶ月に1度、定期的に虫干しを行いましょう。
通気性を良くするため、引き出しには詰め込みすぎないことも大切です。
防虫剤や乾燥剤は1種類にする
桐たんすの中に防虫剤や乾燥剤を入れる場合、1種類に絞りましょう。
これらは特殊な材料を使用しているため、複数を同時に使用すると化学反応によって着物を傷める可能性があります。また、使用する際は次のことを守りましょう。
- 防虫剤や乾燥剤が直接着物に触れないようにする
- 化学反応防止のため、樟脳やナフタリンを使用した防虫剤を使用しない
- 防虫剤や乾燥剤は半年~1年に1回を目安に入れ替える
留袖をできるだけ高く売却するコツ
留袖は工夫次第で、通常の相場より少し高く売却できます。事前に以下のことに注意しておきましょう。
適切な保管方法を心がける
売りたい留袖を見つけたら、できるだけすぐに虫干しや桐たんすへの移し替えなどを行い、保管状態をよく保ちましょう。
着物は繊細なので、環境次第では数日置いておくだけでも劣化する場合があります。査定価格を落とさないためにも、湿気を防いで適切な保管を心がけましょう。
証紙をセットにして売却する
証紙がある場合は必ずセットにして査定に出しましょう。証紙があることで価値がさらに高まります。
たとえば宝石に鑑定書がついていたり、ブランドバッグにブランド発行のギャランティーカードが付属したりするように、着物も証紙があった方が付加価値が高いです。
買い手も安心して購入できるため、再販しやすくなる分買取金額にプラス査定がつきます。
証紙は購入時に捨てないように注意し、紛失した場合は探し出してでもセットにしておくのがおすすめです。証紙の有無で数万円も価格が変わることも多くあります。
実績豊富な買取専門店へ依頼する
留袖は着物の売買実績が豊富な買取専門店に持ち込みして買取してもらうのがおすすめです。
買取専門店では着物に詳しい鑑定士が在籍しており、有名作家のものや稀少な作品などを見逃しません。
また、まとめ売りによるボーナスもつくので、複数の着物を売却したい方にもおすすめです。